第5回「闘鶏の世界」
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「闘鶏大会」
 シャモによる闘鶏大会は全国に愛好家団体があり、春から秋にかけて各地で熱戦が繰り広げられている。北東北でも盛んに闘鶏大会がおこなわれている。今回は、青森県八戸市に本拠地を置き、青森・岩手で広く活動する北奥羽軍鶏斗技連盟会が主催する二戸市川代闘鶏大会を取材することとなった。

 大会が開催されたのは去る9月7日。天候はあいにくの雨模様だったが、今年のシーズン最後に開催される大会というだけあって、到着するや会場の並々ならぬ熱気に包まれた。

 たくさんの車が並び、その脇ではカゴに入れられたシャモたちが戦いを待っているという光景が広がる会場。熱気の中心となっているのは、鶏たちが戦いの場となる「土俵」と呼ばれる円形の囲いが並ぶビニールハウス。それぞれの土俵の周囲は観戦者で人だかりができている。

 さて、筆者初めての闘鶏。恐る恐るビニールハウスの中へと足を踏み入れ、土俵へと近付く。正直、頭を何かで殴られたかのようなショックを受けた。シャモたちの戦いがあまりにも激しく、鮮烈だったからだ。

 シャモたちは直径1mほどの土俵の中で、飛び上がり、突き、羽で叩き、脚でとび蹴りを繰り出す。一打必殺という感じではない。相手の技を受けダメージを受けながらも、多彩な技を絶え間なく出し続ける。顔を鮮血で真っ赤にし、半ば眼をつぶしながらも、ひとときも休まることはない。その激しい形相は闘いの神をも想像させたほどであった。

 試合のルールは、「南部60分」と言われる、青森・岩手の南部地方独自のもの。試合時間を60分間とし、まず最初の10分間は、いわゆるウォーミングアップタイム。戦いそのものは最初の1秒から、かなりの激しさで始まるのだが、10分間では勝敗は決めず、もし10分間以内に片方の鶏が逃げ出せば、その時点でノーゲームとなる。

 勝敗については、恐怖心で声を上げてしまう「逃げ鳴き」、土俵から逃げ出そうとする「飛び」、戦意喪失で座り込んでしまう「座り」などの行動をどちらかが取ればそこで決定する。

しかし、闘鶏大会に出場するシャモたちだけあって、いずれも猛者ばかり。そう簡単に「逃げ鳴き」「飛び」などで試合を放棄しようとはしない。打たれても打たれても闘争本能が続く限り戦い続けるのである。

こうした激しい戦いを強いる人という生き物は確かに残酷かもしれないが、そういった感想は表層でしかモノを見れない者の考え方なのだろう。人と鶏が歩んできた歴史的背景、生の生命に触れる喜びと悲しみなど、我々が簡単に伺い知ることができない奥深い世界がそこにはあるはずだ。
闘鶏大会会場。
並ぶ土俵の中で闘いが繰り広げられる。
飛び上がって、蹴りをくり出す両雄。
試合開始後は、派手な技が出るが、持久戦になると嘴が最大の武器。
嘴で突つき合うシャモ。互いの顔面が鮮血で染まる。