第2回「声良鶏の謡」
1 | 2 | 345

南部の地に誕生した声良鶏
 いよいよ今回の主役「声良鶏」の話題に移ろう。北東北を代表する長鳴鶏である声良鶏は現在、国の天然記念物に指定を受け、主に秋田県鹿角市を中心に飼育されている。その発祥は北東北が中心になっていることは間違いないとされているが詳細は謎に包まれている。最も有力視されているのは旧南部藩の米代川上流域から中流域にかけて生息していた地鶏に軍鶏や小国といった他の日本鶏の血が混ざり、明治になって洋種鶏のブラマの交配もあって現在の声良が完成したという説である。ただし、これも実際のところは定かではなく、その昔、原産地から日本へと渡り鳥のように自らの翼で直接飛来し、定着したという少々信じがたい説まである。いずれにせよ神秘的なルーツを持つ鶏なのである。

 さて、このこの声良鶏、その外見はというと鶏の世界を詳しく知らない人にとっては驚きの容姿を備えている。まず、野武士を思わせる豪壮極まる顔つきと大きさに驚く。東天紅の雄の標準体重が2250gに対し、声良鶏の場合はなんと4500gにも達するのだ。しかも、背筋をピンと伸ばして直立するために実に堂々たる見栄えで、鶏の王様といった趣さえ覚えてしまう。

 だが、声良鶏の特徴は何といってもその鳴き声にある。低く太く抑揚に富み、ゆっくりと長い。巧みに長鳴きをする鶏になると20秒も鳴き続けるという。南部の人々はこの長鳴きに魅了され、声良鶏を愛し続けてきたのだ。
鳴き台に立つ声良鶏。
この台に乗ってから7分以内に3度謡わなければならない。